カントール集合の余集合の測度

区間\([0,1]\)におけるカントール集合\(S\)の余集合\(S'\)の測度は、 \[ \begin{align} mS' &= \sum_{n=1}^{\infty(可算無限)} {1\over3} \Big({2\over3}\Big)^{n-1} \\ & = \frac{1/3}{1-2/3}~~~(\because 等比級数の和の公式) \\ & = 1 \end{align} \] である。1行目の\(S'\)の測度が無限等比級数で与えられることの証明。
有限回の手順において、\(S_n'\)の測度は \[ \begin{align} mS_n' &= \sum_{i=1}^{n} {1\over3} \Big({2\over3}\Big)^{i-1} \\ \end{align} \] で与えられることは認めるとする。無限回の手順において、 \[ \begin{align} mS' &= \sum_{n=1}^{\infty} {1\over3} \Big({2\over3}\Big)^{n-1}= 1\\ \end{align} \] となることを証明する。(有限回の手順で等しいからと言って、無限回の手順で等しいかどうかは分からないような気がしたので)

(証明)
\(mS'\lt 1\)と仮定する。すると、ある\(\alpha \gt 0\) があって、\(mS'=1-\alpha\)となる。
級数\(\sum_{i=1}^{n} {1\over3} \Big({2\over3}\Big)^{i-1}\)は、増大列で\(n\to \infty\)で\(1\)に収束するので、ある\(n_0\ne \infty\)があって\(n\gt n_0\)ならば \[ mS_n' = \sum_{i=1}^{n} {1\over3} \Big({2\over3}\Big)^{i-1} \gt 1-\alpha = mS' \] となる。 これは、 \[ mS_n'\le mS'~~~(\because S_n'\subset S'\ 114節2.外測度は単調なので、ルベーグ測度も単調) \] ということに反する。よって、\(mS'\not\lt 1\)である。
また、 \[ mS'\le m[0,1] = 1~~~(\because S'\subset[0,1]\ 114節2.外測度は単調なので、ルベーグ測度も単調) \] である。\(S'\)は可測(\(\because S'は開集合\))なので測度を持つ。よって、\(mS' = 1\)となる。以上


カントール集合の余集合は、非可算無限個の開区間の合併であるが、上記の測度の計算では可算無限しかでてこない。非可算無限個の開区間はどこにいったのか?
\(S'\)の内訳は \[ S'=\overbrace{ \underbrace{ \underbrace{\Big({1\over3},{2\over3}\Big)} _{1回目の開区間\ 1個} +\underbrace{\Big\{\Big({1\over9},{2\over9}\Big)+\Big({7\over9},{8\over9}\Big)\Big\}} _{2回目の開区間\ 2個} +\cdots +\underbrace{\Big\{\Big({1\over3^n},{2\over3^n}\Big)+\cdots\Big\}} _{n回目の開区間\ 2^{n-1}個} +\cdots }_{開区間\ 2^\infty個(非可算無限)} +\underbrace{\Big\{\Big({1\over3^\infty},{2\over3^\infty}\Big)+\cdots\Big\}} _{\infty回目の開区間\ 2^{\infty-1}個(非可算無限)} }^{\infty個(可算無限)の部分集合の合併} \] となっている。\(1〜n回目\)の操作でできる開区間の個数の合計は、\(\sum_{i=1}^n2^{i-1}=2^{n+1}-1~~~(\because 等比級数の和)\)である。 \(n\to\infty\)の極限で\(2^\infty(非可算無限)\)となるが、可算無限個の部分集合に分割されて、\(n\ne\infty回目\)の部分集合の測度は、\({1\over3}\Big({2\over3}\Big)^{n-1}\)となる。 また、\(\infty回目\)の開区間の個数はそれだけで非可算無限個あるが、測度は\(0\)である。これらによって、可算無限個の和によって\(mS'\)を求めることができたのである。
\(\infty回目\)の開区間は、幅が\({1\over3^\infty}=0\)なので空集合である。 さすがに、非可算無限個あつまっても空集合は空集合だと思われる。なので、測度は\(0\)である。